個人事業主だけどインボイス制度がよくわからない。確定申告に影響はあるの?誰に相談したらいいの?わかりやすく解説します

公開日: 2023/10/27

2023年10月からインボイス制度がスタートしました。

テレビやSNSで耳にすることはあっても「あまり内容を理解していない」そんな方も多いのではないでしょうか。


インボイス制度導入により課税事業者は日々の帳票整理や確定申告の方法が変わります。

慌てないためにもインボイス制度を理解し対策をしましょう。


この記事ではインボイス制度の内容、インボイス制度による確定申告への影響について解説いたします。

1. インボイス制度とは


そもそもインボイス制度とはどういった制度なのでしょうか?

今までの制度は事業者が行っている課税仕入れにおいて、消費税8%と10%の商品が混在しても消費税率ごとに税額を記載する義務がなかったため、正確な課税額が把握できませんでした。


このような複数税率に対応し、正確な消費税率と消費税額を把握するために導入されたのが「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。


インボイス制度導入後の2023年10月からは、商品ごとの価格と税率が記載された「適格請求書(インボイス)」を売り手が買い手に発行します。

双方がこの適格請求書を保存することで消費税の仕入税額控除(売上時に受け取った消費税額から、仕入時に支払った消費税額を差し引いて納税ができる仕組み)の適用が可能となるのです。

逆にいうと、適格請求書がなければ消費税の仕入額控除の適用はされません。


適格請求書を発行できるのは「適格請求書事業者」だけであり、適格請求書事業者になれるのは「課税事業者」のみです。

今まで免税事業者だった個人事業主やフリーランスの方でも取引先との関係上、適格請求書の発行が必要と判断した場合、売上規模に関わらず課税事業者になることができ、適格請求書事業者として登録をすることができるようになります。


出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022009-090.pdf#page=2


2. インボイス制度による個人事業主への影響


インボイス制度導入により、これまで免税事業者だった個人事業主が課税事業者になるという方も多いでしょう。

インボイス制度は個人事業主にとってどのような影響があるのでしょうか。

2-1. 消費税の申告・納税が義務付けられる

課税事業者になり適格請求書事業主になると、今まで免除されていた消費税の申告・納税が義務付けられます。

申告期間は課税対象期間の翌年1月1日〜3月31日となり、納付期間は課税対象期間の翌年3月31日までになります。

申告や納税が遅れると遅延税などのペナルティを課せられるため、確定申告は早めに対応することを心がけましょう。

2-2. 経理業務が複雑化する

インボイス制度導入後は、取引先から発行された適格請求書を保存している取引のみが仕入税額控除の対象になります。

個人事業主は取引先が課税事業者か免税事業者かの確認をし、手元にある請求書のどれが適格請求書なのかを1つ1つ確認していく必要があります。


適格請求書は請求書以外にも備品購入や接待交際費、事業活動などに使われた全ての経費に求められるため、経理担当者は請求書や領収書など消費税が関わるものに対して適格請求書の有無を確認し会計処理をしていかなくてはなりません。


また消費税の計算はとても複雑になっています。

今までは1年間の総売上に対する消費税を算出する「割り戻し計算」のみでしたが、インボイス制度導入後は売上の都度発生した消費税額を算出し、それを足していく「積み上げ計算」も採用されることになります。


さらに、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった場合の「2割特例」の適用や、インボイス開始後6年間は免税事業者からの仕入でも仕入税額相当額の一定割合が控除になる経過措置が設けられているため、当面は経理業務が複雑化することが考えられます。


出典:国税庁(消費税の仕入税額控除の方式について)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

出典:国税庁(2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

出典:国税庁(平成31年(2019年)10月1日以後適用する消費税率等に関する経過措置)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/01.pdf

2-3. 請求書のフォーマット変更やシステムの導入

適格請求書の項目は以下の内容となり、今まで使用していた請求書の内容を変更する必要があります。

  1.適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
  2.取引年月日
  3.取引内容
  4.税率毎に合計した対価の額および適用税率
  5.税率毎の区分した消費税額
  6.省類交付を受ける事業者の氏名または名称


また消費税の税率ごとに区分した消費税額等に1円未満の端数が生じた場合、「1つのインボイスにつき税率の異なるごとに1回の端数処理」を行う新たなルールが定められました。

経理業務が煩雑してきたと感じた場合は、新たなシステム導入の検討も視野に入れ業務の簡易化を図ることも必要です。

3. インボイス制度による確定申告への影響


消費税を納めるためには所得税と同様に消費税の確定申告を行う必要があります。

消費税の確定申告は取引先を免税事業所と課税事業者に分けてそれぞれ経理処理をしていくため、1人で全て行うには消費税の申告方法だけでなく、納税について相応の知識が必要となるでしょう。


前述のように、日々の経理業務において請求書や領収書をミスなく処理することが重要です。

売上規模が大きく、取引先の数も多い事業主にとってはかなりの時間と労力がかかる作業になると考えられます。


出典:国税庁(個人事業者用 確定申告の流れ)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi_kojin/r04/pdf/01-03.pdf

出典:国税省(個人事業者用 確定申告の準備)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi_kojin/r04/pdf/01-02.pdf

4. 確定申告をスムーズにするための方法


消費税の確定申告は計算方法や提出書類など所得税の確定申告とは異なるため、事業主や経理部は戸惑うこともあるはずです。

確定申告への不安を解消しスムーズに行うためには、他の機関に相談をすることも大切です。

インボイス制度や確定申告についての相談先は、有料・無料など様々で、電話や対面、インターネット等で相談ができます。

  ・公共機関(税務署、市町村役場など)
  ・団体(税理士会、青色申告会、商工会議所など)
  ・民間事業者(税理士、税理士法人など)


無料で相談会を開催する団体もありますので、必要な場合は事前にスケジュールを確認しておくと良いでしょう。

なお税理士に相談する場合、確定申告の代行まで依頼すると十数万の費用がかかることもあります。

またこの他にも国税庁の「確定申告作成コーナー」や、企業からも「確定申告ソフト」が多く出ています。


会計の知識がない初心者でも簡単に使うことができ、計算や入力のミスを軽減できるため、このようなソフトを利用して作業効率を図ることも効果的です。

不安な方は早めに相談をしたほうがいいでしょう。


出典:国税庁(税についての相談窓口)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shirabekata/9200.htm

出典:国税庁(確定申告書等作成コーナー)
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl

5. まとめ

インボイス制度導入に伴い免税事業者から課税事業者となると、日々の経理業務以外や確定申告の方法が変わります。

事業主の方はインボイス制度の内容を理解したうえで、インボイス制度に対応したシステム導入の検討や経理処理など業務フローを確認する必要があります。

インボイス制度にどのように対応していくかぜひ検討してみてください。